Graduate School of Environmental Studies
Home > 環境学と私
環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。
● 「地球にも人にもやさしい交通システム」をつくるのが仕事です
都市環境学専攻都市持続発展論講座
准教授 加藤博和
(交通・環境計画)
准教授 加藤博和
(交通・環境計画)
2008
年4月、日本はいよいよ京都議定書の約束期間に突入しました。しかし、現状はこの目標に遠く及びません。また、たとえこの目標を達成できても、地球温暖化が防げるわけではありません。安倍前首相は2050年に現状から50%削減するという構想を提示しましたが、最近の予測によればさらに厳しい、2050年に1990年比80%減程度が必要と見込まれています。 私
の研究の目的は、このような大幅な排出削減を達成するために、交通部門でどのような取り組みが必要かを明らかにすることです。むろん、こんな途方もない目標を達成するのは大変なことです。 日
本のCO2排出量は1990年代の10年間で約10%増加しました。うち交通部門は約22%増加し、約9割は自動車走行に起因します。2000年代になって交通部門は減少に転じましたが、これは自動車の燃費向上によるものであり、保有台数や走行距離の増加は相変わらず続いています。したがって、大幅なCO2削減のためには、交通行動を左右するライフスタイルやまちづくりの大変革が必要です。とは言え、地球環境を守るためだと訴えても、今を生きる人々に過大な我慢を強いる政策は実行できませんから、動きやすさ(モビリティ)を確保しながらCO2を削減でき、なおかつお金がかからない、地球にも人にもやさしい交通システムとまちづくりをデザインすることに知恵を絞らなければなりません。 ヨ
ーロッパでは、CO2を削減しつつ中心市街地の賑わいを取り戻すまちづくりが常識であり、途上国大都市でも様々な公共交通整備方策が強力に実施されつつあります。一方、日本は完全に周回遅れです。今後日本が、地球温暖化防止のモデルとなって世界をリードしていこうとしても、肝心の自分たちが実践できていないのでは説得力がありません。 私
は、机上の理論ではなく、実際に形にしていく仕事に携わりたいと思い、土木工学の道を志しました。地球環境問題を研究するようになった今も、名古屋とその周辺での地球温暖化防止計画策定や、公共交通活性化の取り組み、普及啓発活動に取り組んでいます。このような「Think Globally, Act Locally」こそが地球環境問題を解決する道であり、環境学そのものであると思い込んで今日も活動しています。 (かとう・ひろかず)