は100キロぐらいがメインです。ですので、一つ一つの雲を個別に表現できるレヴェルでなくて、いまだにパラメタリゼーションという簡単化手法に大きく依存しているのが現状です。全球など大きなスケールのシミュレーションは粗いモデルでやっておいて、見たい領域だけ細かくクローズアップするようなダウンスケーリング手法も検討中です。は、自前で購入しているクラスター計算機やワークステーションです。私が専門とする建築分野では、建築設計などの実務の場で環境予測を活用できることも重要となります。実務の場で環境予測を活用するとなると、スーパーコンピュータのような特別な計算機を使うわけにはいかなくて、汎用の計算機の使用が大前提となります。実は、学生時代にはスーパーコンピュータをフル活用していました。使用料が高いうえに、シミュレーションの多くは失敗になりますので、学生にとっては結構精神的な負担になります。もちろん、使用料の支払いは指導教員の先生がしてくれていたのですが。自前の計算機であれば、それなりに設備投資はかかりますが、気兼ねなくシミュレーションが自由にできる。飯塚 私の研究室で使っている計算機このことは学生にとってとても良いことだと思っています。スーパーコンピュータつながりで言うと、私は名古屋大学の「不老」をとても便利に使っています。開発した富士通は独自のアーキテクチャでスパコンを開発してきた歴史があります。それを「不老」のCPUは、スマートフォンやゲーム機などに使われている省電力型のアーキテクチャを富士通が拡張設計したもので、台湾の半導体企業TSMCが生産しました。新しいアーキテクチャに変えたにも関わらず安定して計算できることに驚きました。どの本にも書かれていないのでお話ししたいのですが、シミュレーションをやる時には判断力が必要で、人それぞれの個性がでます。例えば真鍋先生が1970年代から80年代にかけてやっていた初期の全球大気海洋結合相木 数値シミュレーションでは、一回の実験をするのに、コンピュータ上で4か月から6か月くらいかかります。その間ずっと計算がうまくいってるかチェックしていて、もし何か計算エラーが疑われたときに、止めるべきか、続けるべきか、とても神経を使います。最近はそういう作業を並列で行うことができるようになったので、100個でも200個でも実験設定を変えてセットアップすれば、途中でどうするかといった迷いはないです。一方で、その100個の実験を設定するには、知的な能力を要します。世界中の最先端の研究者は陰でそういう苦労をしています。論文として発表するときは、失敗した実験の結果は出しませんので、学生は裏事情を知っておくと精神的に強くなれると思います。私自身そういうことを30代の頃やっ ていました。最終的に私が導き出したやり方は、一晩で結果がわかる設定でやりましょうということにしています。このような塩梅が、シミュレーション屋さん同士で違ったりする、その個性の違いも面白いと思います。真鍋淑郎先生の「ノーベル物理学賞」受賞は環境学研究科にとってもビッグニュースでしたね。物理学賞と言えば素粒子研究というイメージが強い中、環境学の分野で受賞されるとは夢にも思わなかった人も多いと思います。今回の受賞について、先生方はどう思われましたか。また、真鍋先生との思い出、エピソードなどありますか。私が初めてお会いしたのは、修士一年のときでした。非常に楽しそうにお話される方だなと感じました。環境学研究科で招へい教授として講義された時も同じで、楽しそう。落語みたいに聴いていて引き込まれる。でも質問には意外に厳しく答えを突き返される。信念の中川 須藤真鍋淑郎先生を語る飯塚 悟 いいづか さとる博士(工学)。建築学系 環境・安全マネジメント(工学部 環境土木・建築学科)教授。建築・都市空間の環境実態解析・将来予測、それらの解析・予測に基づく環境向上・改善策の検討や適応建築・適応都市のデザインに関する研究に取り組む。名古屋大学グローバルCOEプログラム特別講演会「地球温暖化問題の今後を考える」で講演される真鍋淑郎先生(2013年1月)
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