HTML5 Webook
6/12

systemmodel-xity)と言うんですが、真鍋先生はそof ntermediate compleある講演をなさっていました。自分がやってきたことを全部伝えたい。そういう思いを感じました。学生にも非常にインパクトがあったと思います。ノーベル賞の受賞は本当に驚きました。というのも、ノーベル賞に含まれない天文や計算科学を対象とする「クラフォード賞」を2018年に受賞されていたからです。基礎物理でもないコンピュータシミュレーションでノーベル賞を受賞されるとは思ってもいませんでした。真鍋先生のご研究を紐解くと、大気中で起こっている現象やプロセスをコンピュータ上で組み合わせて今まで見えていなかったことを提示する、その先見性も含めて先駆者として評価されたとみています。とくに、二酸化炭素による温暖化については、まだ温暖化の「お」の字も起きていなかった1960年代に、簡単な1次元の放射・対流モデルをつくって、提唱された点は非常に大きなものを感じますね。計算機能力がまだまだ低かったという背景が、逆に功を奏したのではと推察します。いずれにしても、この分野に注目が集まったのは非常にうれしく思っています。私は直接お話ししたことはありませんが、我々建築分野の人間にとっても気候学は身近で、真鍋先生の受賞は大変うれしく、勇気づけられました。建築のそもそもの目的は雨風や暑さ寒さをしのぐことで、気象や気候との関わりは本質的に重要です。ですので、気象や気候を専門とする方々が思っている以上に、建築の人間は気象や気候を勉強していると思います。私は海洋研究開発機構に15年ほど勤めていまして、そのとき真鍋先生が、大気海洋結合モデルで地球温暖化のシミュレ―ションを行う部門の長をされていました。プリンストン大学にいらした頃は夕飯をごちそうになったり、趣味の水泳の話などうかがって、プライベートから研究のことまで、いろいろ教えてもらいました。私は、数値シミュレーションと真鍋先生を語る時に、二つの相反する方向性があると思っています。一つの方向性は、現実の世界をコンピュータ上ですべて再現する。もう一つ、真鍋先生は別の方向性に力を入れていた。それは自然界のエッセンスだけを取り出すというもの。そもそもコンピュータでは全部解けません。特に1960年代〜80年代は、コンピュータ能力に限界があり、大気海洋結合モデルなんていうのは熟練の技を持った人でないと動かせませんでした。それを真鍋先生は綱渡りしながら自然界のエッセンスを取り出すことをいち早く着手された。真鍋先生は、その目利きの良さが非常に優れていたと思います。これは業界ではEMIC(Earth i   のモデルに対してすごく愛情を注いでいた印象があります。数値シミュレーションというのは、現実のものをすべて再現すると思われがちですが、EMICに代表されるような自然のエッセンスを取り出すこと。そういうところも教育として若い人たちに広めていきたいと思っています。真鍋先生は1958年にジョセフ・スマゴリンスキーさんに招かれて渡米されるのですが、この人は流体力学の分野で大変有名な人です。彼の下で好きなだけ数値シミュレーションをすることができた。我々大気海洋のシミュレーションを専門とする者は、真鍋先生のノーベル賞受賞を喜ぶと同時に、その背後にスマゴリンスキーの支援があったことも含めて大気海洋、気候分野の受賞だと思っています。真鍋先生はスマゴリンスキーが認めた稀有な存在だったのです。真鍋先生は、これまで一回もご自分で外部予算や研究予算を申請したことがないそうですよ。それはうらやましいですね。研究費とか設備とか、気にしないで自由にやれる環境が大事ですよね。スマゴリンスキーはすごいです。私は学生時代に乱流の基礎研究をしていました。乱流解析手法で飯塚相木相木須藤中川 飯塚ジョセフ・スマゴリンスキーの存在相木 秀則 あいき ひでのり博士(理学)。大気水圏科学系 地球水循環科学(宇宙地球環境研究所 陸域海洋圏生態研究部)准教授。海洋圏の環境・災害問題についての数値シミュレーションや各種波動と気候変動の相互関係の解析に取り組む。

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る