Large-Eddy Smulation(LES)という方法がありますが、その代表的な乱流モデル(サブグリッドスケールモデル)がスマゴリンスキーモデルです。建築分野で取り扱う建物周辺の流れをスマゴリンスキーモデルを用いたLESで解析すると、高い解析精度が得られます。私にとってスマゴリンスキーは神様みたいな存在で、スマゴリンスキーモデルを使うと大体精度良く解けるのでびっくりしていました。マネジメントに関しても大変優秀な人だとは驚きです。いましたね。スマゴリンスキーモデル、すごくシンプルですが、より複雑で高級そうに思える乱流モデルに比べると、はるかに安定していい結果を出す。スマゴリンスキーは真鍋先生とは分野は違いますが、乱流も気候変動と同じぐらい陽の当たる分野でしたら、彼がノーベル賞をもらってもおかしくなかった。さんは流体力学、大気力学で突っ走っていたので、真鍋先生としては同じことをしないで、大気放射や水蒸気、対流に目を向けたのではないでしょうか。そこが良いきっかけだった気がします。私も学生時代にしみじみと思当時、すでにスマゴリンスキー i そういう背景があったんですね。貴重なお話を聞くことができました。真鍋先生はノーベル賞の受賞インタビューで、「研究は好奇心を持って追求しなさい」とエールを送られていました。皆さんの環境予測研究の楽しさやモチベーションは、どんなところにありますか。昨今、研究のなかで、好奇心だけで突き進める部分と、社会的な要請として追及する側面があると感じています。よく理学と工学の話が出ますが、例えば真鍋先生の場合は前者で、温暖化なんて始まっていない時代に単純な好奇心から取り組まれました。これに対して今の研究者の場合、温暖化が目の前にあってそれがなぜ起こって、どう止めるかを考えていかなければならない。ゴールがある問題と、単純に好奇心から始まる問題ではやっぱり取り組み方は違うと思うんです。今はできるだけ理学的好奇心を失いたくないなと思っているところです。いずれにしても、数値シミュレーションは、モデル開発という工学的側面と、現象解明という理学的側面、両方とも満喫できるという魅力をもっと若い方々にアピールできればと思います。とが面白いと思っています。ただし、将来予測では不確実性が含まれることに注意が必要です。温暖化予測でしたら、例えば、将来の温室効果ガス排出シナリオの何を選択し、使用するシミュレーションモデルとして何のモデルを用いるかによって予測不確実性が生じます。ですが、それらの選択に対してできる限り多くのケーススタディを行うことによって不確実性の幅というものが評価できます。将来予測においては、その不確実性の幅を評価することが大変重要だと思っています。私の研究室で行っている建築・都市空間の環境予測においては、例えば、将来の都市形態シナリオなど、様々な将来シナリオが必要となります。それに対して、自分の思いつくままのシナ私は、将来予測が可能となるこリオも組み込んでいるので、環境予測よりも、シナリオ作りの方が面白い場合もあります。将来予測にあたって、私はそこにも面白さを感じています。私は、気象、海洋、土木などどの学会から見ても中心ではない、その接点が、数値シミュレーションとしては未開拓であり、面白いと考えています。そこに新しい理学が生まれたりする。真鍋先生も、既存のものを見た時の中心を狙っていたのではなく、何かつながりのところを探していた、そういうところであれば、どんなシミュレーションも楽しいと考えています。数値シミュレーションが一人歩きしてしまうという問題は、やった人は誰でも悩んでいて、やはり現実との対応がないと怖いものがあります。今の時代は、IPCCが取りまとめたデータが用意されているので、そういう土台の上で数値シミュレーションができることも、若い人に知ってほしいです。新しいことが生み出されるのは分野の境界にあるということですね。この環境学研究科も3つの分野が融合しています。研究科ならではの新しい学問や研究が生み出される可能性もあると思っていますし、期待しています。今日はありがとうございました。相木須藤中川 中川 須藤飯塚相木中川 楽しさとは環境予測研究の《司会》中川 書子 なかがわ ふみこ
元のページ ../index.html#7