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alAnnex I環未境来学の予測国 -  .(2018)の推定によれば、1998環境問題は、今や人類の存続に関わる世界的大問題である。世界的な環境対策は前世紀から論議されており、京都議定書のような取り組みもある。しかしながら、京都議定書は先進国の一部(AnnexI国)に限定されたものであり、温室効果ガスの排出削減効果は限定的であった。例えばGütschowet 年から2015年の期間でAnnexIの排出量が6%減少したものの、Non国の排出量は61%増加した。京都議定書に続く世界的取り組みの一環として、2015年に締結されたパリ協定がある。この協定の特徴は、数多くの先進国・途上国が参加していることである。しかしながら、協定の拘束力は弱い。京都議定書では、目標を達成できない参加国へのペナルティーが想定されていた。パリ協定では、そのような強制力は初めから設定されていない。環境問題への各国の取り組みはあくまで自発的・分権的であり、■環境連邦主義■とも呼ばれる状況になっている。実際、絶対的な排出量削減を目指している国がある一方で、排出量/GDP比で目標を設定している国もある。政策の実施状況を検証する仕組みもあるが、現在の国際的環境政策が■各国によって分権的に定められた政策の寄せ集め■であることに変わりはない。私の狭義の専門である財政連邦主義の分野では、■分権的決定によって、全世界的視点から望ましい政策を実現するのは困難■であることが知られている。この限界は、環境政策にも当てはまる。全世界一体となって環境問題に取り組めば良いのだが、各国主権との兼ね合いが問題となる。公共経済学や環境経済学では、環境連邦主義的枠組みを前提とした維持可能な国際的政策協調の在り方について、理論的模索が続けられている。Gütschow, J., Jeffery, L., Gieseke, R., Gebel, R., 2018. The PRIMAP-hist national historical emissions time series (1850‒2015). V. 1.2. GFZ Data Services.松本 睦博士(経済学)。専門分野は応用ミクロ経済学・公共経済学・地域経済学。最近は、財政連邦主義の応用として、環境連邦主義の理論研究を行っている。国際的環境政策の限界について社会環境学専攻 経済環境論講座 松本 睦 教授

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