編集後記● 本号では「環境と人間のウェルビーイング」をテーマとして取り上げ、「エコラボトーク」では2人のプロジェクトリーダーから、テーマ設定のコンセプト、ウェルビーイングを支える社会制度設計の必要性、気候変動への適応策と地域再生、人生のやりがいの確保と大学が果たしうる役割、環境学研究科の今後の教育プログラムなどについてお話を伺いました。「環境学の未来予測」でも本テーマを踏まえ、遊牧と砂漠化回避、建築耐震の役割、国際的環境政策の限界について大変興味深い執筆をいただきました。「環境と人間のウェルビーイング」を考え、これからの活動につながるきっかけになればと思います。改めて本号にご協力をいただいた皆様に深く感謝申し上げます。 (齋藤 輝幸)都市環境学専攻 環境機能物質学講座 博士後期課程2年陳 嘉儀さん CHAN Kayee2023年9月 軽くて耐久性に富み、その使いやすさから使い捨てとして広く利用されるプラスチック。リサイクルされるプラスチックは世界中で1割にも満たず、ほとんどが埋め立てや焼却で処理されています。陳さんは、資源循環型社会の実現をめざして、廃棄物の再資源化に取り組むジンチェンコ准教授のサステナブルマテリアル研究室で、そのプラスチックに着目。ケミカルリサイクルの研究に邁進しています。ケミカルリサイクルとは、プラスチック廃棄物を利用して従来の化学原料の代替品をつくり、環境材料の合成に有効活用すること。もともと中国の大学で化学を専攻していた陳さん。その知識を環境問題に結びつけたいと考えていた陳さんにとって、環境学研究科はぴったりの場所だったのです。 研究では、廃ペットボトルを、解重合を通じてオリゴマー(化学原料)に分解。それを合成することで、プラスチック由来の水ベースのハイドロゲルなど4種の機能性材料を作成しました。そのうち、ハイドロゲルは吸着剤として優れ、水質汚染物質を除去するだけでなく、従来の高価な吸着剤の代替品として経済性も高く、廃棄物リサイクルニーズに応えるものとして大いに注目されています。陳さんは、この研究成果が認められ今年、名古屋大学学術奨励賞を受賞しました。 「実験は試行錯誤の連続で結果はすぐには出ません。でも大丈夫。私には覚悟があります」と陳さん。新しい材料を自分の手でつくり出し、環境問題に貢献するというチャレンジ精神が研究に向かわせています。そして世界中の研究者が地球環境を考えて研究に取り組んでいけば、よりよい未来が待っていると信じています。【環・45号 広報委員会】 齋藤 輝幸(環45号編集委員長)赤渕 芳宏(広報委員長)熊谷 博之山崎 敦子〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院環境学研究科TEL.052-789-3455www.env.nagoya-u.ac.jp/李 時桓伊賀 聖屋谷川 寛樹編集/編集企画室 群デザイン/オフィスYR名古屋大学大学院環境学研究科名大さんが行く33vol.45
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