環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。
当たり前に暮らせる環境を求めて
社会環境学専攻 地理学講座
松岡 由佳 助教
本教員のプロフィール
「環境」という言葉から、皆さんは何をイメージされるでしょうか。豊かな自然環境を想像する人もいれば、砂漠化や温暖化などの地球環境問題に関心がある人もいるでしょう。私が専門とする地理学は、非常に大まかに説明するならば、人間と環境とのかかわりについて探求する学問といえます。その中でも私は、障がい者をはじめとしたマイノリティをめぐる社会的な課題に関心をもち、研究を続けてきました。
私は、「環境」という言葉から、人間の暮らしを取り巻く様々な側面を思い浮かべます。例えば、今住んでいる街はどのようなつくりでしょうか。地形の起伏が大きく、いたるところに坂道や階段があると、車いすユーザーや高齢者は移動しづらいでしょう。歩道と建物の入口の間に段差があると、車いすの場合、自分だけでは建物の中に入ることが難しいかもしれません。これらは物理的な環境によって人の行動が制限される例であり、街や建物のつくりを変えたならば、身体的に障がいのある方の不便さを軽減できると考えられます。
次は、社会的な環境に目を向けてみます。通院や生活上のサポートを得ることが必要な場合、住んでいる街に医療・福祉のサービスがどのくらい整っているかは、重要なポイントです。そうしたサービスは国の法律や政策に基づいて整備されていますが、自治体ごとの予算や方針によって、また、住民がどのようなニーズを持つかによって、実際には地域差があります。量の面ではある程度のサービスが整っていたとしても、交通の便やサービスの質などの面から利用しづらいこともあるかもしれません。
さらにもう一歩踏み込んで、地域に住む人びとの意識もまた、一つの環境といえます。障がい者への理解が不十分な場合、障がいがあることを隠さざるをえなかったり、障がい者本人やその家族が地域の中で孤立してしまったりすることがあります。特に外見からは分かりづらい障がいほど、誤った理解や先入観を持たれがちです。障がいとともに当たり前に暮らすこと。自分らしい生活ができること。そうした環境は、どのようにして実現できるのでしょうか。私の研究は続きます。
(まつおか ゆか)