環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

野生動物と環境を空から眺める

地球環境科学専攻 生態学講座
井上 漱太 特任助教
本教員のプロフィール


空から見る動物の群れはとても美しく、興味深いです。私はドローンから得られる空撮データを使って動物の群れ行動に関する研究をおこなっています。興味の赴くままウマ・ニホンザル・ウミネコ・オオミズナギドリなど幅広く手を出してきました。とにかく、フィールドに行って・眺めて・飛ばす、ということを大事にしています。

研究を開始した当初は、野生のウマの群れを対象に個体の配列や協調的な運動パターンを生み出す行動ルールについて研究をおこないました。博士号を取得後、環境学研究科の一員となり、しばらくは空撮映像からニホンザルの視線パターンを定量化する研究をおこなっていました。ところが、あるとき海鳥のコロニー上空でドローンを飛ばす機会に恵まれました。最初は鳥を空撮して何かできるだろうか、という気持ちだったのですが、意外と面白い。まず、その圧倒的なスケールに驚愕しました。画角に収まるだけの個体でも数千の規模です。また、数キロ先の海の上にいる鳥を観察することもできます。飛んでいる鳥も止まっている鳥もいるなかで、その配列や運動には何やら規則がありそうです。まだ研究は始まったばかりなので続報にご期待ください。この経験から、物理的に視点を変えて現象を見てみることは、自分の想像力という一種の限界を簡単に超えさせてくれることを痛感しました。

空から見る光景は対象としている種だけではなく、植物・地形・海面・風の強さなど多くの情報を教えてくれます。すると、非常に複雑な要素の中で動物は暮らしていることがわかります。また、これらは日々変動しており、同じ日は1日たりともありません。ドローンを飛ばしている間は、実際あまりすることがないわけですが、毎日少しずつ異なるフィールドの様子を眺めることでそんなに暇をせず、色々なアイディアを想像することができます。究極的には動物も環境も天候も全て何らかの形でつながっているはずで、いつかこれらの複雑な情報を統合して、群れ行動の理解を目指します。

(いのうえ そうた)