環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

コンクリート構造物の長寿命化

都市環境学専攻 建築構造システム講座
アイリ アブドゥシャラム 助教
本教員のプロフィール


コンクリートは、世界で最も広く使われている建設材料であり、私たちの生活に欠かせないものとなっています。世界人口の増加に伴い、今後コンクリートの需要が加速していくと考えられますが、コンクリートの主成分であるセメントの生産過程では、世界の二酸化炭素排出量の7%が排出されます。カーボンニュートラルの達成を目指す現在においては、セメント製造による二酸化炭素排出量を削減することが求められており、その方法としてセメントの使用量を減らすことが挙げられます。そこで、その問題にたいして、私はセメントの生産量を抑え二酸化炭素排出量を減らすため、コンクリート構造物の長寿命化をテーマとした中部電力との共同研究に取り込んでいます。

浜岡原子力発電所の廃炉解体工事に伴い、コンクリート壁の力学的性質を調べたところ、建設された50年前よりも強度が向上していたことを発見しました。原子発光分光法、X線回折や電子顕微鏡など先進的な材料実験により、セメント水和物と骨材鉱物が数十年かけて反応したことが、強度が向上した原因であることが明らかになりました。この反応が起きる条件は、コンクリート内部の水分量と温度が関係しており、原子力発電所の壁は厚いため水分量が多く、運転期間中に温度が高くなったことで発生したと考えられます。反応生成物のひとつはトバモライトという鉱物であり、現代のコンクリートで初めて発見されましたが、構築から2000年以上が経っても良好な状態に保存されていたローマン・コンクリートでよく見られるため、耐久性を高める働きがあると考えられます。一般に、コンクリート構造物は経年劣化により性能が低下し、50年程度で建て替えが必要ですが、この反応を活用することで構造物の耐久性を向上させ、長寿命化にも貢献する可能性があります。大型構造物の調合設計と維持管理をこのような知識に基づいて行い、寿命を何十年延ばすことで、セメント生産量を減らし、二酸化炭素排出量を削減できます。

カーボンニュートラルの達成に向けて、新しい建物を省エネルギーで建てることも重要ですが、既存構造物を長寿命化し、できる限り長く活用することも必要です。

(アイリ アブドゥシャラム)