環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

センシングがつないでいく

都市環境学専攻 環境機能物質学講座
長尾 征洋 准教授
本教員のプロフィール


私の研究の原点は、電気化学にあります。学生時代からこのテーマと向き合い、電池やセンサの開発を通じて、化学反応のおもしろさを追いかけてきました。センサの研究では、大気や排気ガスに潜む有害な成分を「センシング」することに取り組んできました。微量な変化も見逃さず、正確に検出する――そのための技術を磨くことが、長年の課題でした。

研究を深めるうちに、電気化学反応をうまくコントロールすれば、有用な物質をつくり出せることにも気づきました。そして「つくる」という視点が加わったとき、自然と「何を原料にするか」という問いが生まれてきました。注目したのは、木質・草本系バイオマスなど、これまであまり活用されてこなかった生物由来の材料です。眠ったままになっている資源から、エネルギーを生み出せないだろうか。電気化学という得意分野が、資源や環境というより大きなテーマへとつながっていきました。

ただ、未利用資源を活かすには、まず「どこにあるのか」を知ることが欠かせません。資源を使う前に、資源をセンシングする必要があるのです。そこで現在取り組んでいるのが、LiDARという最新の移動センシング技術を使った計測です。都市の樹木や建造物を三次元で精密にスキャンすることで、どこにどれだけの資源が眠っているかを明らかにしようとしています。有害物質のセンシングから始まった研究が、今度は資源そのものをセンシングする技術へと発展したわけです。

振り返ってみると、「センシングする」という行為が、私の研究を糸のようにつないでいることに気づきます。環境に悪影響を与えるものを見つけ出し、眠っている資源の在りかを明らかにする。センシングとは、見えないものを見えるようにする営みであり、それはそのまま環境学が目指す姿にも重なると感じています。名古屋大学大学院環境学研究科という、多様な分野が交差する場で、これからもその問いを深めていきたいと思っています。

(ながお まさひろ)