環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

志を胸に歩んだ道のり―パプアニューギニア人留学生としての名古屋大学での経験

社会環境学専攻 環境法政策論講座 2025年9月修了
パプアニューギニア 気候変動・開発庁 職員
ジョナ・アウカ(Jonah Auka)


2023年9月に名古屋へ降り立ったとき、私が携えていたのは荷物だけではありませんでした。家族と祖国の期待、そして自分を成長させたいという決意です。JICA SDGsグローバルリーダーシッププログラムによる支援を受け、パプアニューギニア人として、また太平洋島嶼国出身者としてただ一人、名古屋大学に受け入れられた私は、誇りと不安の両方を抱えて日本での生活を始めました。そこから始まったのは、私の人生の最も大きな転換期でした。

穏やかな街並み、効率的に運行される電車、敬意と正確さを重んじる文化。名古屋は温かく迎えてくれましたが、私はそれまで知らなかった困難に直面しました。「一人で暮らす」ということです。

パプアニューギニアでは、部族や大家族、地域の共同体の中でいつも誰かがそばにいます。けれども名古屋にあるのは、本とパソコンと静まり返った部屋だけでした。公務員の職を休職し、妻と3人の子どもを残してきた私にとって、最初の3か月は最も苦しい時期でした。その沈黙を前に、自分の決断は正しかったのかと思い始め、次第に疑念が湧いてきました。

しかし、信仰が私を支えてくれました。敬虔なキリスト教徒である私にとって、祈りは心のよりどころとなりました。孤独を感じるときも、信仰に力を見いだしました。そして少しずつ、困難は私をつまずかせる障害ではなく、前へ進むための踏み石へと変わっていったのです。

学びの面では、指導教員の野村康先生に大きく支えていただきました。野村先生は、親であると同時に学生でもある私が、両者を両立させることの難しさを理解してくださいました。折々に一時帰国することで、家族と過ごしながら現地調査や学会参加、データ収集を行うことができました。こうして私はモチベーションを回復し、家庭の責任を犠牲にせず研究を軌道にのせることができました。

環境学研究科、とりわけ社会環境学専攻は、知的な成長と文化的な交流の場でした。日本や世界各国から集まった仲間たちは、助言や友情、日本文化についての知見を惜しみなく与えてくれました。その優しさによって、名古屋は私にとって外国というよりも第二の故郷になりました。

名古屋大学で過ごした時間は、単に学位を取得するためだけのものではありませんでした。その経験は、身体的にも精神的にも、そして信仰の面でも、私を大きく変えました。困難は私の立ち直る力を磨き、厳しい学問的訓練は思考力を鍛えました。日本文化に深く触れた経験は私の世界観を広げ、孤独な時間は私の信仰をより強いものにしました。

2025年9月29日、私は環境法政論講座での学びを終え、修士(環境学)の学位を得ました。それは個人の達成である以上に、忍耐と家族の支え、そして機会の力が結んだ実りだと思っています。

現在、私は気候変動・開発庁(CCDA)に戻り、パプアニューギニアの気候ガバナンス、気候変動適応プロジェクト、計画策定に引き続き携わっています。名古屋大学で得た知識と視点、とりわけ環境法、政策形成のプロセス、そして環境変化が社会に及ぼす影響に関する学びは、現在、国内の気候変動対策や政策形成を支援するうえで直接役立っています。

大学での学びを通じて、複雑な政策環境に対応し、多様な関係者と連携しながら、国内各地で災害や気候変動に強い地域社会づくりに貢献する力を身につけることができました。さまざまな意味で、名古屋大学での経験は、単に母国へ帰るためだけでなく、より明確なビジョンと新たな使命感を持って帰国するための準備を整えてくれたのです。

私の旅は平坦ではありませんでしたが、すべての困難に見合う価値がありました。思考を広げ、人格を鍛えてくれる場所を探している方にとって、環境学研究科はきっとその1つになるはずです。家族、指導教員、友人、そして神に心から感謝します。

(じょな あうか)