環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

現地観測とリモートセンシング

社会環境学専攻 地理学講座
阿部 隆博 助教
本教員のプロフィール


近年、人工衛星をはじめとするリモートセンシングデータが様々な研究分野で利用されています。自然地理学分野でも従来の現地観測に加えて、人工衛星・航空機・ドローンなどの多様なリモートセンシングデータを使うのが当たり前の時代になりつつあります。リモートセンシングは文字通り、離れた(リモート)ところから、調べる(センシング)ということなので、研究者が到達するには環境的に難しい場所、現場で調べるには広すぎる場所に利用するのが有効と言えます。

私は、衛星データを使った地球物理学的研究(主に地表面の動き)を行っています。学生時代は、いつ・どこで発生するかわからない地震に伴う地殻変動、標高5000 mの山々に位置する長さ数十kmの氷河の動きなどを研究していました。学位取得後は、永久凍土の融解に伴う地形変化を主に研究しています。永久凍土帯は広大ですので、リモートセンシングは大いに有効です。その一方で、衛星データの解析結果に対して、現地では何が起こっているのか、実際に見てみたいと思うようになりました。それ以降、シベリアやアラスカ等で現地調査を毎年行っています。

「衛星データの検証として現地観測を行う」という表現があります。それはとても重要な作業ですが、それ以上に現地で見ることは重要な意味合いがあります。そもそも、リモートセンシングでは観測できない項目も数多くあります。たとえば、地面の中の様子はリモートセンシングでは基本的にわかりません。なので、リモートセンシングで地表面の様子を調べて、現地観測で地中の様子を調べるということをします。また、永久凍土研究は土壌・森林・地形・水文など様々な分野に関わりますので、各分野の専門家と一緒にリモートセンシングデータの有効性を議論することはとても勉強になります。

現地観測で見えるもの、リモートセンシングで見えるもの、それぞれ分解能や観測手法の違い等で見え方が異なります。この違いがどうして出てくるのか、それらをどのように統合して自然現象の実態に迫れるのか、それが今後の環境学研究のさらなる発展につながっていくのではないか、と考えながら日々研究に精進しています。

アラスカ内陸部・ポーカーフラットにおける永久凍土帯の風景

(あべ たかひろ)