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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

気候変動適応とまちづくり

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都市環境学専攻 建築・環境デザイン講座
山崎 潤也 助教
本教員のプロフィール

昨今、気候変動問題はその話題を聞かない日がないほど人類の喫緊の課題となっていますが、気候変動対策には大きく分けて2つの方向性があります。一般的によくイメージされる、温室効果ガス(主にCO2)の人為的な排出を抑制しようという対策は、気候変動の進行を遅らせようという意味で「緩和策」と呼ばれます。一方で、将来的な気候変動の進行を前提とし、それに対して自然や人間社会のあり方を調整していこうという対策は「適応策」と呼ばれます。仮に今すぐに人為的な温室効果ガスの排出がゼロになったとしても、これまでの排出の影響は今後数世紀にわたって持続するものと予測されており、人類は「緩和策」のみでなく「適応策」についても真剣に考えなければならない時代に入ってきています。
私は都市計画やまちづくりの観点から「適応策」を考える研究を続けていますが、そもそも「適応策」とは何かということを考えようとすると、これはなかなか難しいです。例えば、「適応策」としてすぐにイメージされるものは暑熱対策や水害対策などがありますが、これらは何も最近になって始められたものではなく、人類が有史以来取り組んできた対策です。また、天候不順に強い農作物を品種開発しよう、生態系の変化による感染症の蔓延を抑制しようなどの対策もありますが、当然、これらもその道のプロの方々がすでに様々なことを検討しています。そう考えると、「適応策」とは何かを考える専門家がいるというよりも、各分野の専門家がこれまでの研究の延長として「適応策」を考えるという構造があるべき形なのかもしれません。「気候変動適応学」という学問があるとすれば、それはプラットフォームのような存在であり、各分野の知見を横断的に取りまとめるような役割が求められるように思います。
そのような役割は、都市計画やまちづくり学の元々の学問的な性格と一致します。この分野は都市空間で生じる様々な課題への対策を考えていく学問ですが、関連する分野は理学、工学、農学、経済学、法学、社会学など多岐にわたります。そして、そのような性格から、様々な社会課題を考える上でのそれこそプラットフォームになり得る学問のようにも感じられます。つまり、「気候変動適応学」と「都市計画・まちづくり学」は要求される研究上の役割が近く、相性が良いのかもしれません。学問の融合を掲げる環境学研究科の理念に則り、私は今後とも様々な専門分野と連携しながらこれらの研究に取り組んでいきたいと思っています。
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気候変動×都市デザインワークショップの様子
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気候変動×都市デザインワークショップの成果
(やまさき じゅんや)

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