ホーム > 環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

ピンチをチャンスにして夢を実現する

顔写真

社会環境学専攻 2021年度博士後期課程修了
いであ株式会社 生物多様性研究センター副センター長
松沢 友紀

私は、環境学研究科社会環境学専攻に在学していました。かつて博士課程を中退した経験があり、46歳で社会人大学院生として再挑戦することには大きな不安がありました。実際、仕事と研究の両立は想像以上に大変で、何度も心が折れそうになりましたが、乗り越える価値があったと実感しています。
私の研究テーマは都市養蜂の機能とガバナンスです。人類が利用する主要作物の75%以上は送粉動物に依存している一方で、蜂群崩壊症候群(CCD)や昆虫類の減少が懸念されています。また、養蜂には送粉、食物生産、コミュニティ形成等の便益がある反面、刺胞被害、生態系攪乱、感染症拡大といった懸念もあります。近年、世界各地で都市養蜂が増えていますが、日本では法制度が脆弱な状態にあることから、私は都市養蜂の社会学的、自然科学的問題点を提起し、日本の実情に即したルール作りを提案しました。
大学院に在学した3年のうち2年間はコロナ禍にありました。多くの大学院生が大学に通えず苦しんでいましたが、東京に住む私はオンラインシフトにより指導教官や研究室のメンバーとのコミュニケーションが増え、あきらめかけていた博士論文の作成を3年で実現できたのです。“ピンチはチャンス”という言葉を実感する瞬間でした。
現在勤務する環境コンサルタント会社では三つの部署を兼務し、通常業務の他に大学講師、研究、事業開発に従事していますが、ここでもミツバチとの関わりは続いています。昨年、念願であった養蜂の事業化を実現し、飼育から製品製造、HACCP認証取得、商品デザイン、販路開拓まですべてを担当しています。多忙ですが、非常にやりがいがあり、毎日が充実しています。
環境学の魅力は、社会科学と自然科学を融合したアプローチができることだと思います。専門分野の異なる人たちとの議論はいつも新鮮で、環境学を学んだことは大きな財産となりました。卒業式で総長が語られたように、社会課題や環境課題の実質的な解決を担う「勇気ある知識人」として、誇り高く生きていきたいと思います。
(まつざわ とものり)

PAGE TOP