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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

システム的に考える

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都市環境学専攻 持続発展学系
長谷川 正利 助教
本教員のプロフィール

この度、2024年7月16日付で名古屋大学環境学研究科環境学専攻の助教に着任いたしました、長谷川正利と申します。新任教員として「環境学と私」というテーマで寄稿する機会を頂きましたので、簡単に私の研究内容と今後の抱負についてご紹介させていただきます。
私の専門は土木環境システム工学で、特に都市の構造物に関連する資源の蓄積と循環に関する研究を進めています。都市は複合的なシステムとして、多くの資源を消費し蓄積すると同時に、膨大な廃棄物を排出しています。都市も生き物のように成長し、成熟し、やがては衰退します。この「都市の新陳代謝」を理解し、持続可能な資源利用を促進するための手法を見つけることが、私の研究の主なテーマです。最近は、GIS(地理情報システム)等を用いて、高解像度且つ空間情報を考慮した分析に取り組んでいます。
私が研究対象としている都市構造物(建築物、道路、上下水道など)は、人間活動や自然環境と密接に絡み合い、非常に複雑なシステムを形成しています。資源利用の方策を立案するには、都市構造物の特性やそれらの相互作用を踏まえ、これらの現象を説明するための数学モデルを構築する必要があります。例えば、「建築物の解体に伴うコンクリート塊の道路路盤材としての循環利用」を考える際、「建築物の解体量」「コンクリート塊の再資源化率」「道路路盤材としての再生資源需要量」などを数式化し、モデルとして表現します。
このモデル化により、対策の効果や因果関係を定量的に把握することが可能となり、意思決定に必要な情報を提供することができます。モデルを作成する際には、現実の事象を精緻に把握することはもちろん、都市全体のシステムを俯瞰して捉える視点が重要です。そのため、精緻化と抽象化を行う際には、現実の事象に対する深い理解と想像力が求められます。(イメージを膨らませるために、実際に現場を訪れることもあります。)
タイトルの「システム的に考える」という言葉は、私が学生時代から研究室に代々伝わる言葉で、私の座右の銘としている言葉です。現在では「現象を精緻に把握し、その本質を理解し、全体を表現すること」として、自分なりに解釈しています。精緻化と抽象化の間を行き来しながら、「都市の新陳代謝」を理解し、持続可能な資源利用の促進に貢献することを目指しています。
(はせがわ まさとし)

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