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パリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校、天津大学建築学院と合同建築・都市設計ワークショップをパリで開催
大学院環境学研究科都市環境学専攻建築学コースは、2025年9月15日(月)から19日(金)までの5日間、フランスのパリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校(ENSAPVS)を主会場として、ENSAPVSと合同で国際学生建築・都市設計ワークショップを開催しました。「What if the Bièvre river were to flow once more through the heart of Paris」という今回の課題に、ENSAPVSの留学生22名と天津大学の学生4名、そして本学の建築学コース博士前期課程1年の後藤和也君、佐藤舞千代さん、山本蒼太君、渡辺早紀さんの4名が参加し、4つの混成チームに分かれて本課題に取り組みました。ENSAPVS参加学生22名は、スペイン、モロッコ、ドイツ、ポーランド、メキシコ、ブラジル、スイス、アメリカ、イタリア、オーストリアと多岐にわたる国籍を有しており、これまでになく国際性豊かなワークショップとなりました。本WSの指導はENSAPVSのBoris Weliachew教授、天津大学の鄭穎副教授と本学の小松尚教授、項一朗助教が行いました。
本ワークショップは、2009年度にENSAPVS、2015年度に天津大学と締結した学術交流協定を基盤として、本学建築学コースおよび両校の修士課程相当の学生を対象に実施しているものです。文化的背景の異なる学生が英語を共通言語として協働し、建築・都市デザインの提案をまとめる機会として2009年より開催しており、本年で通算27回となりました。
ビエーヴル川(Bièvre river)は、セーヌ川(Seine River)の支流であり、南の郊外からパリの13区と5区を流れ、最後はセーヌ川に注いでいました。昔は多くのパリの市民に恵まれていた川でしたが、17世紀末から工業廃棄物によって汚染されたため、パリの地下に埋められ、また都市インフラに取って代わられました。今回は、パリ市も取り組むこのビエーヴル川の再生計画を課題とし、都市の中でビエーヴル川の流路を巡ってパリ市民に緑と自然を感じさせる空間の新しい提案が求められました。
WSは初日の午前にBoris Weliachew教授が本課題の説明を行い、ビエーヴル川の歴史と都市問題を学生に提示しました。午後、ビエーヴル川の旧流域を中心とし、街並みの現地調査を行いました。その後、各チームの学生たちは、各自の敷地に対して議論を交わしました。2日目の午後には、ENSAPVSの建築材料展示室や、旧倉庫建築、荷物運送機械、図書館を見学しました。3日目の夕方には、中間発表会を行い、各チームの敷地分析結果及び設計コンセプトの提案の方向性を確認しました。4日目から、具体的な提案の表現、図面、模型の制作に集中していきました。
5日目の夕方には、成果発表会を行いました。発表には、担当教員だけでなく、ENSAPVSのPatrice CECCARINIJ教授、Jérémie BEDEL教授も出席しました。各チームが分析結果と提案内容を図面(A0判2枚)と模型で発表し、講評では、4つのチームからの提案に対して、ビエーヴル川の再生によって、現代都市において関わってきた自然空間、親水空間、歴史的記憶が、いかに創造的な方法で実現されるかを考察しました。さらに、先生方が各グループに対して、個別のフィードバックを行い、活発な議論が交わされ、会場は大いに盛り上がりました。5日間という短期間の中で、各チームはビエーヴル川の再生計画に取り組み、それぞれが独自のコンセプトを掲げ、川の有機的な形態や自然環境を都市空間に取り込む提案を行いました。
なお、本ワークショップに参加する院生の派遣は、独立行政法人日本学生支援機構の令和7年度海外留学支援制度(協定派遣)採択プログラムとして実施し、教員の派遣等は環境学研究科研究科長裁量経費の支援を受けて実施しました。
《参考》今回および過去のWSの様子や成果については、下記ウェブサイトで紹介しています。
https://www.nuac.nagoya-u.ac.jp/unique/index.html
