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パリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校、天津大学建築学院と合同建築・都市設計ワークショップをパリで開催

2026年夏、ヨーロッパ各地では極端な高温が続き、最高気温が40℃に達する日も多く見られました。こうした気候変動の深刻化を背景に、暑熱環境に適応するための建築や都市のあり方、そして都市空間における具体的な対策が、ますます重要な課題となっています。このような状況を踏まえ、2026年度の国際学生建築・都市設計合同ワークショップ(WS)は、大学院環境学研究科都市環境学専攻建築学コース、フランスのパリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立高等建築学校(ENSAPVS)、天津大学の3校合同で、2026年9月14日(月)から18日(金)までの5日間、ENSAPVSを主会場として実施しました。

今回のテーマは、「Cool School – Adapting Parisian Schools to a Changing Climate」です。気候変動による高温化が進むなか、子どもたちが日々長い時間を過ごすパリ市内の小学校や幼稚園に着目しました。ますます厳しくなる将来の暑熱環境を見据え、熱波から子どもたちを守りながら、生態学的・都市環境学的な手法を用いて、既存の小学校とその周辺の都市環境を気候変動に適応させるための新たな提案を課題としました。このテーマは、パリ市が展開する先駆的なプログラム「Cours Oasis(オアシスの校庭)」や「Rues aux écoles(学校前の通り)」から着想を得ていますが、学生には単にこれらのプログラムを参照するだけでなく、批判的に検討し、先行事例から学びながら、さらに発展させることが期待されました。今回の課題敷地は、パリ13区のプラス・ディタリー北側に位置しています。小学校と保育園が同じ街区の対角線上に立地していることから、2つの学校の校庭から街区、さらにその周辺までを設計対象としました。学生には、学校と周辺地域との関係やまちづくり、さらには都市環境まで視野を広げ、建築から都市までのさまざまなスケールを横断した提案に取り組むことを求めました。

本年度のWSには、ENSAPVSの学生及び留学生計16名、天津大学の学生11名、そして本学建築学コース博士前期課程1年の飯田旭くん、岩田歩士くん、高塚茉由さん、田島航くん、宮本賢吾くん、向井祐希くん、山本萌さん計7名が参加し、4つの混成チームに分かれて本課題に取り組みました。ENSAPVSからはフランス人学生に加え、ドイツ、ルーマニア、トルコ、カナダ、イタリア、モロッコなどからの留学生も参加し、多様な文化的背景を持つ学生による国際性豊かなグループワークとなりました。本WSの指導は、ENSAPVSのBoris Weliachew教授、Lebanese UniversityのSalah el-dinn教授、天津大学の鄭穎副教授、楊鴻玮副教授、本学の小松尚教授、李燕講師、項一朗助教が担当しました。

本WSは、2009年度にENSAPVS、2015年度に天津大学と締結した学術交流協定を基盤として、本学建築学コースおよび両校の修士課程相当の学生を対象に実施しているものです。文化的背景の異なる学生が英語を共通言語として協働し、建築・都市デザインの提案をまとめる機会として2009年より開催しており、本年で通算28回となりました。

WS初日の午前には、参加学生と教員全員でパリ13区役所を訪れ、パリ市が小学校を対象に進めている気候変動への適応策「Cours Oasis」について説明を受けました。また、フランス、日本、中国における小学校の文化や校舎・校庭のあり方、子どものためのまちづくりについて意見交換を行いました。Cours Oasisは、子どもの視点から緑や自然環境を取り入れ、教育や自然への理解、校庭や学校周辺環境の改善を目指す取り組みです。その後、パリ13区および12区の小学校周辺の街路や校庭を対象に現地調査を行いました。夕方にはENSAPVSに戻り、対象敷地の説明とグループ編成を行いました。

2日目からは、各グループで敷地の課題を分析し、それぞれの視点から意見交換を重ねました。さらに、敷地のスケール感や日射環境をより実感するため、朝から再度現地を訪れ、調査を行ったグループもありました。3日目の午後には中間発表を行い、各チームの敷地分析と設計コンセプトを共有し、提案の方向性を確認しました。4日目からは、設計コンセプトをもとに、具体的な滞在空間のエスキスを重ねながら、街区スケールでの提案としてまとめていきました。

5日目の朝には、日本と中国の学生はENSAPVSの建築材料展示室、図書館、3Dプリンターやレーザーカッターなどを備えたアトリエを見学しました。午後からは、限られた時間の中で、パース図の作成やプレゼンテーションシートのレイアウトなど、最終発表に向けた作業を急ピッチで進めました。夕方には成果発表会を行い、担当教員に加え、PIPAのPhilippine BARBATO氏も参加しました。

発表会では、各チームが分析結果と提案内容をA0判2枚の図面とコンセプト模型を用いて発表しました。4つのチームからは、地形の操作、冷却設備と遊具の一体化、一定のモジュールに基づく可変的なブロックの組み合わせ、延長可能な屋根と地形を活用した子どものための屋外空間など、それぞれ異なるアプローチによる提案が示されました。これらを通して、小学校とその周辺において、子どもたちが涼しく楽しく過ごすための創造的な空間のあり方を考察しました。

講評では、教員から各グループに具体的なフィードバックが寄せられ、活発な議論が交わされました。5日間という短期間の中で、各チームは独自のアプローチから、学校周辺の公共空間を改善し、子どもや保護者、住民が集い、交流し、自然を体験できる、涼しく、楽しく、安全な周辺環境とまちづくりのあり方を提案しました。

なお、本ワークショップに参加する院生の派遣は、独立行政法人日本学生支援機構の令和8年度海外留学支援制度(協定派遣)採択プログラムとして実施し、教員の派遣等については環境学研究科研究科長裁量経費の支援を受けました。

《参考》今回および過去のWSの様子や成果については、下記ウェブサイトで紹介しています。
https://www.nuac.nagoya-u.ac.jp/unique/index.html

5日目 成果発表会後の参加者集合写真